最低賃金の計算
最低賃金法に違反していませんか?
自分はお給料を多く貰っているから、最低賃金なんて関係ない。そう思っていませんか。一見、給与が多く支払われていても、最低賃金法に違反していることがあります。
例年10月1日に最低賃金が改定されます。最低賃金法に違反していないか、以下の手順で見直してみましょう。
1.用意するもの
2.下調べ
(1)給与形態
月給制だと思っていたけれど、契約書を見直してみたら、実は日給制だったなんてことがあったりします。
給与形態が、時給制・日給制・月給制・年俸制・歩合制のいずれであるか、雇用契約書や就業規則、給与明細等で確認してください。
(2)賃金総額(最低賃金の算定から除外されるもの)
見落としがちなのがここ。日給制・月給制・年俸制・歩合制の方は気をつけて。
以下の(ア)〜(カ)に列挙される手当は、いかなる理由があろうと、最低賃金の計算上、賃金総額から除外しなければなりません。以下の手当が支給されていても、これら手当を除いた金額で、最低賃金額を満たしているか確認することになります。
下記のとおり、割増賃金として支払われている固定残業代も、当然、除外して計算することになりますのでご注意ください。
(ア)臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
(イ)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
(ウ)時間外手当・休日手当・深夜手当等の割増賃金
(エ)精皆勤手当
(オ)通勤手当
(カ)家族手当
(3)所定労働日数・所定労働時間数
1時間あたりの単価が、最低賃金を上回っているか否か確認する必要があるため、雇用契約書や就業規則で、対象者が何日、何時間、労働する契約となっているか確認しましょう。
給与形態ごとに、確認すべき数字が異なるので、以下にまとめました。
(ア)日給制
- 1日の所定労働時間
(イ)月給制・年俸制
- 年間暦日数(365日or366日)ー年間所定休日数=年間所定労働日数
- 年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12ヶ月=1ヶ月平均所定労働時間
3. 計算
実際に計算を行い、最低賃金額以上か否か確認をしてください。
(1)時給制の場合
時間給≧最低賃金額 (時間額)
(2)日給制の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額 (時間額)
(3)月給制の場合
月給÷1ヶ月平均所定労働時間≧最低賃金額 (時間額)
※「1ヶ月平均所定労働時間」は、上記2(3)(イ)より計算してください。
(4)年俸制の場合
年俸額÷12ヶ月÷1ヶ月平均所定労働時間≧最低賃金額 (時間額)
※「1ヶ月平均所定労働時間」は、上記2(3)(イ)より計算してください。
(5)歩合給(出来高払その他請負制)の場合
歩合給(出来高払その他請負制)÷賃金計算期間中の総労働時間数≧最低賃金額 (時間額)
(6)上記(1)〜(5)の組み合わせの場合
例えば、基本給が日給制、各手当 (職務手当など) が月給制で、一部に歩合給があるような場合は、上記(1)~(4)の式により時間額に換算したうえ、 それを(5)で算出した金額と合計したものと最低賃金額 (時間額) を比較します。
4.具体例
月給制の場合で、確認してみましょう。
Aさんの給与明細は以下のとおりです。
STEP1:給与形態を確認する
STEP2:算定から除外される手当がないか確認する
賃金総額より、「臨時に支払われる賃金(結婚手当等)、1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)、時間外手当・休日手当・深夜手当等の割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当」を除いて計算します。
今回の事例でいえば、「家族手当」「通勤手当」「固定残業代」「精勤手当」を控除しなければなりませんので、控除後の賃金額の合計は165,000円となります。
STEP3:1ヶ月平均所定労働時間を確認する
雇用契約書を確認したところ、Aさんの所定休日は土日祝日となっていました。また、所定労働時間は1日8時間となっていました。
これにより、2020年1月1日〜同年12月31日までの366日のうち、土日祝祭日は計119日あることから、
年間所定労働日数:366日(年間暦日数)ー119日(年間所定休日数)=247日
1ヶ月平均所定労働時間:247日(年間所定労働日数)×8時間(1日の所定労働時間)÷12=164.66…時間
STEP4:最低賃金額を満たしているか確認する
165,000円÷166,66時間≒1,020円≧最低賃金額 (時間額)
以上です。
▶︎最低賃金に関するリンク集